MASANOBU SATO
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佐藤 匡将(さとう まさのぶ) 1987/08/17 Type O
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2013年1月アーカイブ

名古屋シネマテークで1月18日まで上映されている映画「ニュータウンの青春」の副題には『さよならだけが人生だ、いやマジで』と書いてある。

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『さよならだけが人生だ』というのは、井伏鱒二(いぶせますじ)が「勧酒」という漢詩の最後の句を訳したもの。

勘酒    (酒を勧む)
勧君金屈巵 (君に勧む金屈巵<きんくつし>)
満酌不須辞 (満酌辞するを須<もち>いず)
花發多風雨 (花發<ひら>けば風雨多く)
人生足別離 (人生別離足る)

井伏鱒二は以下のように訳したのだ。

この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ

花に嵐のたとえっていうのは、やっと花が咲いたのに嵐で散ってしまうこともある、というような具合なので、ようやく腹を割って話せるほどに仲良くなりはじめたかと思えばもうお別れか、という感じだと思う。

この『さよならだけが人生だ』という言葉に『いやマジで』をつけた監督の感性に憧れた。私はビビビときて、ちょーかっこいいと思った。

死を忘れるな!     (メメントモリ)
今日を生きろ!     (カルペディエム)
この時を大いに楽しめ! (さよならだけが人生だ)

上のふたつはピンとこないから「そんなの知ってるし」ってかんじなのに「さよならだけが人生だ」ってのはなんだかしっくりときて受け入れられるなー、いいなー、好きだなーっと考えていたところに森岡龍の『いやマジで』がきた。

映画の素晴らしさは「ニュータウンの青春」公式ホームページに掲載されている鈴木沓子のレビューを読んでくださればおわかり頂けるだろう。

森岡龍監督!私の人生はこの映画を観たことでちょー豊かになりましたよ、いやマジで。ありがとう!



<追記1>
『さよならだけが人生だ』という言葉だけではそのまんまぱっくてるし、『さよならだけが人生だ』だけで使うのは恥ずかしかったからその恥ずかしさを和らげるために『いや、マジで』をつけたんだ、と名古屋シネマテークの舞台挨拶で監督は言っていた。『さよならだけが人生だ』という言葉をどこで手に入れたのかという質問には、この言葉が好きで『花に嵐の映画もあるさ』という著書まで出している川島雄三監督が好きでそこから知ったのだと言っていた。そのため井伏鱒二は後から知ったのだそうだ。

<追記2>
私が好きな寺山修司は『さよならだけが人生ならば』という詩で「さよならだけが人生ならば 人生なんかいりません」と言っている。以下にその詩を載せておく。

『さよならだけが人生ならば』

さよならだけが人生ならば また来る春は何だろう
はるかなはるかな地の果てに咲いている野の百合何だろう
さよならだけが人生ならば めぐり会う日は何だろう
やさしいやさしい夕焼と ふたりの愛は何だろう
さよならだけが人生ならば 建てた我が家なんだろう
さみしいさみしい平原に ともす灯りは何だろう
さよならだけが人生ならば 人生なんか いりません。

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